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ドキュメンタリー『精神』

 7月18日と19日は、映画の上映あとに監督や出演者が おはなしされるということで、19日に『精神』というドキュメンタリー映画を シネマクレールで みてきました。


 『精神』は、精神障害者の日常を「こらーる岡山」という「診療所であり、居場所であり、作業所である」空間を 舞台に「観察」した映画です。監督は、想田和弘(そうだ・かずひろ)さんで、デビュー作は『選挙』というドキュメンタリーです。ひじょうに たいせつな素材を 提供してくださるドキュメンタリー作家だと おもいます。


 映画の舞台が岡山だっただけに、観客さんは ものすごく たくさんでした。18日も満員だったそう。


 映画は、モザイクや音楽を つかわず、スジがきもない。淡々としていますが、おもしろ おかしく、あったかい。いろんなことを かんがえながら、うるうる ないていました。何度でも みたいような映画ですね。2時間以上あるんですけども。


 想田監督の『精神病とモザイク』という本は すでに かってあったのですが、『精神パンフレット』と『シナプスの笑い』8号(ラグーナ出版)を かってきました。ラグーナ出版というのは、「私達、精神障害体験者、医師、看護師、精神保健福祉士が集まり、 「出版社」を始めました!」ということです。鹿児島の出版社です。


 ええと、映画の感想ではなく、映画のあとの座談会で感じたことを かきます。映画に、すてきな詩を かく おじさんが でてきて、たまならく魅力的なんですが、座談会を みていると、「こんなに すてき」という はなしが きこえてくる。わたしも、すてきだなあと感じたのですが、かんじんなのは、その主語でしょう。「あの おっさん、ええなあ。ともだちになりたいわ」というのなら いいのですが、いっきに飛躍して「精神障害者は こんなに」という物語にしてしまいそうなところがありました。もちろんそういった感想は、その「すがのさんという おじさん」だけの魅力ではなくて、ほかの たくさんの ひとたちの魅力に ふれてこその感想なのだと おもいます。ただ、とにかく、個人の魅力は、個人に とどめておくべきではないかと おもいます。


 部分を もって 全体を 評価するような やりかたは、あやうい方向にも ながれていくものです。


 わたしが いいなあと感じたのは、すがのさんの詩を みんなで よんで、きいていて、やんや わんやと わらいながら、たのしそうにしていた みなさんの笑顔でした。それから、すがのさんが しゃべりっぱなしのよこに、ただ ことばすくなげに すわっている ひとでした。


 精神障害者と「そうでない ひと」のあいだにある「カーテン」。監督の ねがいは、そのカーテンを とりはらおうことです。わたしも、そういうカーテンを なくしていきたいと おもっています。


 さて、どのように。



 「理解する」だとか、「ほめる」だとか、そんなことは ふざけたはなしです。必要なのは、理解されることでも、ほめてもらうことでもないはずです。必要なのは、つめたい まなざしを むけないこと、無視しないこと、いっしょに いきていくこと、ささえあっていくこと。それだけです。


 理解できないところは、のこるに きまっています。理解するしないで、また だれかを 分断するようなことを しては いけないのです。よく わからないけど、なんだか すきだ。あるいは、すきになれないけど、でも なんだかんだで いっしょに やっている。そんな関係で いいではないですか。


 なによりも、理解し、評価するのは「こちら側」であり、わたしは「こちら側」にいるんだという発想そのものを、すてさることが必要です。コミュニケーションは、やりとりです。一方通行にばかり かんがえていると、「こちら側」だと おもっている「わたしたち」という集団が 「ようしゃない」「こわい ひとたち」だと感じられているということが、わからなくなってしまいます。


 「わたしたち」というのは、そのときそのとき、ある意図を もって つくられるものです。その目的というものが、「あのひとたち」を わたしたちから分別し、排除するかたちで つくられる「わたしたち」であるならば、そんな「わたしたち」が すばらしいわけがないのです。


 人間は だれも おなじではありません。ちがいます。そして、そんなに ちがうものでもありません。おおげさなことは いわずに、がははと わらって、いっしょに やりくりしていこう。それだけで いいじゃないですか。



 スジがきのない、観察映画というかたちのドキュメンタリーの『精神』は、まさに「おおげさ」になることもなく、ただ、みるひとを ひきつける。おすすめです。


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