以前、だいたい2002年ごろ、わたしのなかで軍事環境問題といえば水質汚染や土壌汚染のことだった。
2014年ごろになり、軍事騒音問題について学習した。2015年に かいた『ことばのバリアフリー』第6章の7.1「基地騒音という問題」でも とりあげた。
さらに、数年まえに軍事産業や戦争が うみだす温室効果ガスの問題を学習した。
※温室効果ガスとは、産業革命以前は空気の層が ほどよい断熱材として機能してきたのに、産業革命以後、化石燃料をもやしつづけることによって断熱材の効果が逆に過剰になってしまい、太陽の熱が地球に とどまりすぎてしまう、そのことで地球が温暖化してしまうことを説明するもの。ほどよい量の二酸化炭素は すみやすい気温を維持するために必要であるが、過剰になると平均気温が あがり、夏には猛暑になり、気候が不安定化してしまう。それが いま地球で人類や あらゆる生命が直面している現実であり、それを「気候危機」と よんでいる。
環境問題は専門知識があるわけでもなく、多少は問題意識があるというレベルであったため、ゆっくりしたペースで軍事環境問題について知識を更新してきた。
モーガン・フィリップスの『大適応の始めかた―気候危機のもうひとつの争点』(齋藤慎子=さいとう・のりこ訳、みすず書房、2024年)をみると、軍事産業がうみだす温室効果ガスについての記述がある。フィリップスはつぎのように説明している。
ベンジャミン・ネイマークほか…中略…の研究者たちによると、米軍だけで1日あたり27万バレルの石油を消費し、年間2万5000キロトンの二酸化炭素を排出している。こうした数字をネイマークたちは次のように捉えている。「米軍をひとつの国と仮定すると、その燃料使用量だけで、温室効果ガス排出量が世界で47番めに多い国になる。これはペルーとポルトガルのあいだに位置する(注54)」。米軍がダントツで世界最大の規模だとしても、世界中のほかの国々の陸海空すべての軍隊の温室効果ガス排出量を米軍の排出量と合わせると、その環境「軍靴の痕(ブーツプリント)」――ネイマークの造語――は、とんでもない量になる。
※注54「Neimark, B. et. al. (2019) US military is a bigger polluter than as many as 140 countries – shrinking this war machine is a must, The Conversation. <https://theconversation.com/us-military-is-a-bigger-polluter-than-as-many-as-140-countries-shrinking-this-war-machine-is-a-must-119269>」xiページ
カーボンフットプリント(carbon footprint)とは、さまざまな製品が、材料を調達するところから はじまり、加工し、組み立てて完成させ、販売のために移動させること、さらに廃棄したりリサイクルしたりするという一連のサイクルで、どれだけ二酸化炭素をだすのか、その量をあらわす用語である。カーボンブーツプリント(carbon boot-print)とは、軍隊がどれだけ二酸化炭素をだすのかを言語化するものだと いえそうだ。
「“carbon boot-print”」とグーグル検索すると、つぎのような記事が でてくる。2024年1月の記事である。
「Measuring the carbon ‘boot print’ of Israel’s war in Gaza」By Nina Lakhani『Bulletin of the Atomic Scientists』ウェブサイト
たしかに、考えてみれば軍備を維持するだけでも装備の製造や訓練、廃棄などで温室効果ガスが はきだされる。軍備をもつ国は、戦闘機、軍艦、戦車などをつくり、うごかすために化石燃料を大量に消費し、温室効果ガスをはきだしている。
さらに、戦争をすれば莫大な量の温室効果ガスをはきだすことになるし、破壊されたものをかたづけるために、つくりなおすために、結果的に あらためて温室効果ガスが発生する。医療や支援にも、結果的に 温室効果ガスが発生するだろう。
ガザはイスラエルによって迫害をうけつづけてきた。近年もインフラを破壊する非道な行為が報道されてきた。直接的な被害がある。
さらに、地球温暖化(気候危機)によっても生活環境が悪化し、生存が おびやかされる事態に直面している。ガザは慢性的に水不足になっていることが報道からも確認できる。ガザの天気予報をみても、10日間 雨マークが ずっとない状態だったりする。つまり、気候危機によっても被害をうけている。この被害が わかりづらい。
つい先日、「活動家・グレタさん 数十隻の船を率いて再びガザへ」(2025年8月13日 テレ朝ニュース)という記事が でた。このニュースに接して環境問題とガザを関連づけることができずに、「なぜだろう」と疑問に感じる人もいるようだ。
しかしである。
飛行機が排出する温室効果ガスを問題視する人が、戦闘機を批判するのは当然のことだ。戦争を批判するのは当然のことだ。インフラを破壊する行為を批判するのは当然のことだ。
気候危機とは、表面的には わかりにくい問題である。その しくみを理解して問題提起している人が明確な加害行為を問題視し、くいとめようとするのは当然のことだ。
戦争の被害をうけている地域が、気候危機によって どのような危機に さらされているのか。そこに関心をもち、声をあげていく必要がある。たとえばガザの天気予報を定期的にチェックしてみると いい。温室効果ガスの削減という目標が、どのような意味をもつのか、再確認するためにも。
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