リンクは自由。これはウェブの常識です。
ところが、どうだろう。靖国神社(やすくに じんじゃ)のウェブサイトは。
リンクの設定について
- リンクをご希望の際は、本内容に同意の上、貴サイトの内容・URL・氏名・連絡先・リンクの趣旨を靖国神社広報課まで、文書若しくはFAXにてご連絡下さい。なお、当社からの回答があるまでリンクの設定はご遠慮願います。
設定はホームページのトップ頁「http://www.yasukuni.or.jp/」となります。
- リンクは貴サイトからの片側のみを原則とします。相互リンクについては現在、神社関係団体に限らせていただいております。
- 以下に該当するサイトからのリンクは一切お断り致します。
- フレーム内などに当ホームページを表示させ、靖国神社ホームページがフレーム内の一部であるかのように見せるリンク設定はできません。ポップアップ表示またはウィンドウ全体が切り替わる形式にて設定をお願い致します。
- リンク許可後であっても、貴サイトが当社の本使用条件に合致していないと判断した場合は、直ちにリンクを外していただきます。
- リンクによるトラブル及びあらゆる損害に関し、靖国神社は一切の責任を負いません。
- 本使用条件は、予告なしに変更することがあります。変更後は、変更後の使用条件が適用されますので、予めご了承下さい。
靖国神社広報課
所在地:〒102-8246 東京都千代田区九段北3-1-1
TEL:03-3261-8326 FAX:03-3261-8625
典型的な「無断リンク禁止」サイトである。その特徴を まとめてみよう。
- 「貴サイトの内容・URL・氏名・連絡先・リンクの趣旨」を 説明することを 要求している。
- 連絡は郵送かファックスを 要求している。
- メールアドレスは記載されていない。
- トップページへのリンクを 要求している。
- 掲示板からのリンクを 「一切お断り」している。
- 「リンクによるトラブル及びあらゆる損害に関し、靖国神社は一切の責任を負いません。」というのは、駐車場の「お断り」みたいだ。
まず、リンクは自由ということを 再確認しよう。それはウェブの常識である。
- ウェブページのリンクおよびその他の利用について (後藤斉(ごとう・ひとし))
リンクは自由ということについて、もっとも参照されているのが うえにリンクした 後藤さんの説明です。「ウェブページの作成とリンク行為」を みてみましょう。
ウェブページは著作物の公表の一形態です(著作権法第四条 を参照)。ウェブページの作成は、著作物の作成一般と同じく、作成者の主体的な 表現行為であり、その中での他のウェブページへのリンク行為も 例外ではありません。したがって、表現行為一般が表現者の自由意志と良識と 責任とにおいて行われることであるのと同様に、リンク行為はリンクを張る側の 自由意志と良識と責任とにおいて行われるべきことであると、後藤は考えます。
他サイトへのリンクは一般に言及もしくは参照の一種です。リンクをたどる 際に読者はリンク先にあるリソース自体をアクセスするのですから、引用では ありません。したがって、リンク行為は一般に著作権法上の問題ではありません。 これは公刊された書籍を話題にして会話したり、感想文や書評を書いたり、 あるいは参考文献として挙げたりすることが著作権法上の問題ではないのと 同様です (参考文献7、参考文献10の1997年5月22日参議院文教委員会における政府側答弁、参考文献11の Ticketmaster Corp. v. Tickets.com訴訟の判決要旨、参考文献12のWorld Wide Web Consortiumの見解 を参照)。
被リンク側の著作者は、「下位のページに直接リンクを張られては自分の意図と違った順番で読まれることになり、それでは困る」と言うかもしれません。…中略…しかし、人は本を必ず1ページ目から読まなければならないものでしょうか。…中略…
ウェブのユーザビリティの観点からしても、必ずサイトのトップページを経由しなければならないという主張こそ、読者に対してむしろ不親切であり、したがって不合理です。読者はトップページから必要な情報のあるページに簡単にたどり着くことができるとは限りません。必要な情報のある下位のページに直接リンクを張って誘導する方が読者に対して親切であることは明らかです。もし、直接下位のページに誘導された読者が注意書きなどを読み落とす恐れがあって不都合だ、と考えるのであれば、ウェブサイトの著作者は、各ページが当該サイト全体の中でどういう位置づけにあるかを読者に明示すればいいのですし、必要ならば積極的にそうすべきです (参考文献2、参考文献9を参照)。
結局、閲覧に制限のないウェブページに対してリンクを張ることを禁止あるいは制限することができるとする主張には、合理的な根拠はありません。すなわち、公開されたウェブページへのリンク行為はリンク先のページの著作者の権利をなんら侵害するものではありませんから、リンクはリンクを張る側の自由意志と良識と責任とにおいて行われるべきことです。あるウェブページにかりに「リンク禁止」という表示があった場合、それはリンクを張ろうとする側にとって自分の良識に基づいて判断するための一つの材料にはなりますが、何ら強制力をもつものではありません。むしろ、「リンク禁止」の表示はそこにリンクを張ろうとする人の表現の自由を侵す可能性があるとさえ言えます(参考文献4、参考文献6、参考文献7、参考文献8を参照)。
いかがでしょうか。ウェブというのは、リンクで網のように連結している空間です。ウェブに文書を 公開するということは、世界のどこからでも アクセスできる状態にするということです。公開しておいて、リンクは勝手にしてくれるなということは できないのです。それでは、みせておいて「みるな!」というのと、ほとんど おなじです。
無断リンク禁止というのは、ある種の「ひとりずもう」にすぎません。それは、一個人が主張しようとも、いち宗教法人が主張しようとも、おなじことです。「ひとりごと」のようなものです。なんら実質的な効力を もたないのです。
ヤスクニが 自分たちを どのような空間であると規定しているのか、わたしには よく わかりません。ですが、これだけは いえます。ウェブに文書(ハイパーテキスト)を 公開する以上、自由にリンクされるのは さけられないということです。ウェブの常識を しらないがゆえの「リンク条件」なのか。あるいは、自分たち(ヤスクニ)が 特別な団体だと おもっているのか。
無断リンク禁止サイトは、いくつもある。だが、個人のサイトを あげつらうよりも、権力批判と むすびつけるかたちで「無断リンク禁止」を 批判していきたいものだ。
参考リンク: