ざっと よんだ。原著は、1988, 1990年となっているので そんなに あたらしいデータではないのだけど、ともかく、しっておくべき現実だ。
まず、「民衆が十分に食べられるかどうかを決定しているのは明らかに、単なる人口以外の多くの要因である」という点は、よくしられた事実だ(18ページ)。それは、スーザン・ジョージ『なぜ世界の半分が飢えるのか』朝日選書などにも かいてある。
ラッペとシュアマンは、出生率が たかい地域では、(1) 経済的な生活保障が こどもの収入に依存する、(2) 乳児の死亡率がたかい、(3) 女性の地位が ひくく、女性の意志で避妊することが困難であったり、宗教的な理由で避妊をさけている、(4) 女性が結婚以外の選択肢をもちわせていない、(5) 女性にとって、家庭の外での教育や雇用の機会がほとんどない、と指摘する。
家庭の貧困、衛生や医療面が不十分な点、女性の地位のひくさなどが人口爆発を生じさせるということだ。だから、人口問題を解消していくには、包括的なアプローチが必要となる。だが、裕福な北側諸国の支援は、ほとんど家族計画の調節にあてられている。さらに ひどいことに、「出生率を下げるための唯一の手段としてますます強力な避妊手術に身を委ねることによって、多くの政府や国際機関は女性にとっての安全性よりも政策の効率性を優先するようになってきた」という(63ページ)。たとえば、
(注射用のデポ・プロベラは)それを一回注射すれば3ないし6ヶ月間妊娠を防ぐことができる。米国では一般的に使用するには危険すぎると考えられているが、家族計画機関は80カ国以上の国でデポ・プロベラを推奨している(63ページ)。身体的には安全だといわれる不妊手術も、「多くの第三世界のクリニックでは手術の滅菌条件が不十分なので、不妊手術は危険なものになりうる」し、医療施設が利用困難であるかぎり、経口避妊薬の副作用は「先進国の女性の典型的な場合よりもいっそう深刻な影響」をあたえることになる(68-69ページ)。
最新の長期作用型避妊薬のひとつであるノアプラントは…中略…女性の肌に埋め込むもので、5年あるいはそれ以上も妊娠を防ぐ時限放出型カプセルである。…中略…米国では使用を認可されていないが、コロンビア、中国、フィンランド、スウェーデン、タイ、インドネシア、エクアドルを含む10カ国で法的に認可されている。…中略…インドネシアの首都ジャカルトには、ノアプラントの除去ができる医療施設はひとつしかない(65-66ページ)。
不妊手術は、女性にとって通常不可逆的なものであるから、選択肢を奪ってしまう最後のステップとなる。そしてそれは、人口政策機関のあいだでますます人気を博しつつある(66ページ)。
「人口爆発の権力構造」の最底辺にいるのは、あきらかに女性である。そして、出生率を抑制する「家族計画」で もっとも身体的苦痛を負担させられているのも、女性だということだ。女性のエンパワーメント(「力をつけること、社会的地位の向上」54ページ)こそが もとめられる状況のなかで、女性をさらに傷つけるという状態になってしまっているのだ。南北問題の いびつさを象徴する現実だ。
ところで、「衛生」といえば具体的に なんのことだか通じにくいのだが、なにより不可欠なのは、安全な水である。
この水ひとつをとっても、世界の権力関係によって多大な格差が ひろがっていることが近年になって指摘されるようになっている。いわゆる、水問題だ。つぎは、水問題をとりあげる。