hituziのブログじゃがー

あべ・やすし。最近は ツイッターばー かきょーる。

工業的な農業と ゆったりした農業の共存。そして、飢餓を うみださない国際社会へ。

 有機栽培を 支持するのは、消費者の「食の安全」などというもののためではなく、なによりも「生産者の生活環境の保全」のためであるべきだ。消費者の「食の安全」のために農薬を つかうことを 批判するのは おかしい。もちろん、農薬を つかいすぎることは よくないことだろう。けれどもそれは、農業に たずさわる ひとたちの生活環境だけが悪化してしまうのを さけるためであるべきだ。食の安全はその結果でいい。有機農業は たいへんなことだ。それを わかっておく必要があるし、農薬も、いま容認されている基準値さえ まもっていれば、じゅうぶんに安全であるということを 理解する必要がある。山下惣一(やました・そういち)は「農業というのは有機だけでも無機だけでもない」という。おっしゃるとおりだと おもう(山下「私が有機農業をやらない理由(わけ)-「世直し装置」としての役割を期待して」『季刊あっと』2008年 12号、8ページ)。


 遺伝子くみかえ作物についても、食の安全などという お題目で批判するのは、どこか おかしいように感じる。わたしには遺伝子くみかえは まったく安全だと断言する知識はない。けれども、わたし自身は遺伝子くみかえ作物を こわいとは おもわない。そもそも、毎日のように たべているのだから。


 遺伝子くみかえ作物の導入は、工業的な農業を すすめるうえで当然の結果であるかと おもう。社会分業で一部の ひとだけが農業を になうのであれば、農業に効率を もとめるのは当然のことだ。この工業的な世界において、農業だけは ひとの力で がんばるというのは、あしき精神論だろう。



 アメリカなどの国は、工業的な農業によって あまりに たくさんの穀物や大豆を つくっている。その おかげで、日本でも やすい肉を たべることができる。飼料が やすく入手できるからこそ、肉も牛乳もタマゴも やすいのだ。そして、突然 飼料が ねあがりすることで、たくさんの生産者が廃業に せまられることになる。
 また、主食となる穀物が かなり やすく輸入できることで、世界の最貧国は単一種 大面積 栽培(モノカルチャー)によってコーヒーやカカオばかりを つくるようになる。モノカルチャーは植民地政策の結果であるが、それが さらに強化されてしまうのだ。そうして、主食は輸入しつつ、先進国むけに嗜好品ばかりを つくるようになる。それで外貨を かせぐ。そして、穀物の値段が急に あがって、飢餓(きが)に くるしむことになる。


 この世界で飢餓を うみださないために必要なことは、いざというときの「保険」となる生活の安全保障を 国際的な規模で つくりだしていくことだろう。新自由主義を こえて、たすけあいの精神を 発揮することだろう。


 食料は十分にある。それが とどけられないのは、飢餓を うみだしてでも カネを かせぎたい ひとたちが いるからだ。公平な貿易(フェアトレード)運動は、消費者による草の根運動だ。それは、したからのアプローチ(ボトムアップ)ということになる。その運動によって、いかにして国際協調を 政策として実現させていくのかということが とわれているはずだ。草の根運動によって、よりよい政治(トップダウン)を 国際的に実現させるのを 目標に すえるべきだ。一部の商品であっても公平な貿易を 実現していく。そして それに とどまらず、「すべての貿易」を 公平なものに かえていく。それが、公平な貿易運動の目標であるべきだ。


 農業のはなしに もどりたい。工業的な農業は、現代社会において当然のことだと おもう。だが、むかしから農家の ひとたちが そだててきた種子(タネ)を たいせつにする。そのような農業も ある。自家採種による農業は、自分たちで工夫して自分たちが のぞむタネを つくりあげる。「自分でやる(DIY(=do it yourself(ドゥ・イット・ユアセルフ)))」の精神だ。たいへんだろう。けれども、たのしいかもしれない。伝統的なタネを まもりたい ひと、自家採種が やりたい ひとは遺伝子くみかえ作物を つくらない。それが、当然の選択として みとめられる。あたりまえのことだろう。


 世界的に みれば、アメリカのように広大な農地を もつ農家は、それほど おおくはない。片手間に兼業農家を やっている ひとも たくさんいるわけだ。世界全体がアメリカ式になる必要はないはずだ。


 工業的な農業と ゆったりした農業が共存し、そして、飢餓を うみださない国際社会を つくっていけるように、たべものについて あらためて、かんがえなおす必要がある。わたしは、そのように かんがえています。わたしの文章に いたらないところがあれば、率直に ご意見、ご批判いただければと おもいます。


関連記事: