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エビを たくさん たべるということ。

 村井良敬(むらい・よしのり)『エビと日本人』岩波新書が でて、21年が たちます。1988年に出版された この本は、2007年に読編が でています。村井良敬『エビと日本人II ―暮らしのなかのグローバル化岩波新書です。


 『エビと日本人』を みてみましょう。


 えび業界の「現場」の人びとは、大ていのこと、大ていの問題や矛盾を知っている。しかし、現場の声は、いつの間にかかき消され、最終的に「儲かるか否か」だけが、輸入業者の判断基準になってしまう。
 乱獲、くず魚投棄、トロール漁への抗議、マングローブ林の破壊、黒変防止の薬剤投与……、こうした事実を「現場」は知りぬいている。だが私たちには、大事件でも起きないかぎり伝わらない。消費者である私たちは、なるべく多くの情報を得て、消費行動をしたい。消費の背後に不公正や搾取、とりかえしのつかない生態系の破壊、あるいは生活の破壊などがあるのを知ったら、その消費にはブレーキがかかるだろう。
(213ページ)


 この本を よんでエビは あまり たべなくなった ひとが、たくさん いらっしゃると おもいます。わたしも そのひとりです。そうした ひとたちにとって、村井さんのいう「エビが日本社会にあふれているかのようだ」という指摘は、そうだなあと、うなづかされるものです(217ページ)。エビを なるべく たべないという生活を えらんだ瞬間から、ほとんど毎日のように『エビと日本人』が連想されてしまうのです。ああ、これにも エビが、ここにも エビが…。


 なぜ輸入エビの大量消費が問題なのか。それをヴァンダナ・シヴァの『食糧テロリズム多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか』明石書店の第3章「盗まれた海の収穫」を 参照しながら かんがえてみたい。この本はインドの農業や漁業を とりあげている。


 まず、トロール漁船によるエビ漁の問題について(トロール船については、トロール船 - ウィキペディアを みてください)。


 世界のどこでも小エビやクルマエビ類のトロール漁は、いかなる漁業よりも混獲物の割合が高く、年間1600万トンくらいに及ぶと報告されている。中には水揚げされたエビ類1トンに対して、最大15トンもの魚類が廃棄されるようなエビ漁もある。
(63ページ)


 シヴァによれば「1970年以来、伝統的な漁民たちは、海洋生物と彼らの生活を守るために機械化トロール漁の禁止を要求してきた」という。そして、「北側の消費者に向けて、この禁止を支持して、機械化トロール船で収穫されたエビ類や持続不可能な養殖によって育てられたエビ類をボイコットするように呼びかけてきた」という(64ページ)。


 つぎにエビの養殖について。シヴァによれば「米国などの西側諸国にも非常に生産性が高く、利益率の高いエビ養殖場はある」にもかかわらず、「全体として、西側諸国が世界のエビ生産に占める割合は、25パーセント以下にすぎない」という。シヴァは、つぎのように つづけている。


 この事実は、エビ類の消費者が裕福な国の住人であるのに、エビ養殖が第三世界に広まる主要な理由のひとつが、集約的なエビ養殖が引き起こす環境破壊にあることを物語っている。商業的エビ養殖がいかに持続不可能なものであるかは、これが試みられた全ての国で証明されている。そういうわけで、この産業は「やり逃げ(rape and run)」産業として知られているのだ。
(70ページ)


 たとえば、「過去数十年におけるマングローブ林消失の主要原因は、エビ養殖池である」(71ページ)。そして「養殖池の塩水は隣接する農耕地や地下水面に染み出していく」。そして、つぎのような水被害が ひきおこされているのだ。


 地下水の塩水化のために、沿岸地域の村落では重大な飲料危機に陥っている。1997年にデリー市で公聴会が開かれ、そこで沿岸の住民たちは、かつては水が豊富だった地域で工業的なエビ養殖が水飢饉(みずききん)を作り出してきた現状を訴えた。
(73ページ)


 「水を手にいれるために10キロの道を歩く」「ポット一杯5ルピーの水を買う」「湿気と塩気で家が潰れてしまった」、そして「500家族が家を」うしなった。つまり、「沿岸地域の生態系が破壊されると共に、そこに住む人々の生活も破壊された」のだ(74ページ)。


 シヴァが紹介しているように、インドの「伝統的な養殖システム」であれば「持続可能な」養殖ができるのだ(76-79ページ)。それを できなくさせているのは、なにも気づかずにいる日本やアメリカの消費者であるはずだ。シヴァの『食糧テロリズム』の すばらしい点は、むごい現実を 提示しつつも、あたらしい うごきを きちんと紹介していることにある。第3章の しめくくりは、読者に希望を みせてくれる(82-84ページ)。だが、その希望を いまだに ふみにじっているのが、日本で「エビを たくさん たべている」ひとたちに あることに、気づく必要がある。


 『東京に原発を!』というスローガンを おもいだすなら、「日本にエビ養殖場を!」と さけぶことも できるはずです。それを 想像して はじめて、「日本では 安全な水が ただで手に入る」ということが、「どういうことなのか」を、やっと自覚することが できるのです。


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