チャットについての本というのは、あんまり ないような気がする。森岡正博(もりおか・まさひろ)さんの『意識通信』なんかは かなりの労作で、すぐれたチャット論だと おもうけども。
今回紹介するのは、ご自身もチャット人間だったという室田尚子(むろた・なおこ)さんの『チャット恋愛学』PHP新書。べつにチャットは恋愛のためだけにするものじゃないけど、チャットにおけるコミュニケーションの特徴を、「チャットラブ」に注目して論じるというのは、わるくない手法だろうと おもう。チャットをする人は、この本をよんで自分がしていることをすこしばかり客観的に ながめることができるのではないかと おもう。
文字メディアについて研究する わたしとしては、チャットは文字でコミュニケーションをするということの利点と欠点をかんがえさせてくれる。パソコンで文字をうつことに なれてしまった人にとっては、声にだして会話するよりも文字のほうが楽であったりもする。そこで「楽」であるとこに安住してしまうと、不本意なかたちで人間関係をこじらせてしまうことも でてくる。チャットで あれこれ話をしているときは、よくも わるくも「いきおいに のっている」状態になっている。そこで自分の主体性をうしなってしまえば、「いきおいに のまれる」ことになってしまう。チャットのたのしさや楽なところに安住してしまわないためにも、自分なりの「チャット倫理」をつくって自制する必要があるんだろうと おもう。それはなにより、チャットをたのしむためである。そのつぎに暴言をはいてしまわないためである。
本の「はじめに」で室田さんはチャットが「負のツール」になってしまわないために「どうしたらいいのか」という問題設定をしている。わたしが かんがえるには、「状況に ながされないように自分を維持すること」だろうと おもう。
でですね、室田さんに ひとつ指摘させていただくと「移転したサトコのホームページ」をさがしあてることを、「たとえば、サトコの家の前でじっと張り込みをして、出てこないとわかると、ゴミ箱や郵便受けを漁ってサトコの現在の居場所を探し出そうとした、というのと同じことだ」とは、とてもじゃないけど いえないんじゃないですかということです。URLをみつけだすこと自体は、なにも非難されるようなことでは けっしてないと おもいます。それは「だれが、どのようなかたちで」ということに かかわらずです。問題なのは、「URLをみつけだして、それから なにをしたのか」でしょう。公開することを前提にしたホームページというものと、個人のゴミ箱をいっしょにすることは できません。このあたりの認識のちがいが、「無断リンク禁止」問題でも意見が対立するわけですけども。
グーグル:「チャットにおける」